介護保険制度における要介護認定審査期間の長期化が問題となっています。法律では申請から30日以内に結果を通知することが原則とされていますが、多くの市町村でこの期間を超過しています。
2022年度下半期のデータによると、全1735市町村の平均認定審査期間は39.5日となっており、30日以内という目標を大きく上回っています。
こうした要介護認定の遅れの常態化や、認定プロセスにおける調査・評価・判定結果のばらつき等により、介護保険サービスの利用者が、必要なサービスを迅速に利用できていない事例が発生している。
【主な遅延原因】
1. 認定調査員の不足:高齢化社会の進行に伴い、申請者が増加していますが、調査員の数が追いついていません。
2. 主治医意見書作成の遅れ:医師の多忙さや意見書作成の煩雑さが原因となっています。
3. 認定審査会の開催頻度不足:人員や予算の制約、手続きの複雑さにより、審査会の開催が限られています。
4. 書類準備の遅延:認定調査票や主治医意見書の作成に時間がかかっています。
【遅延の影響】
1. 必要なサービスの利用開始が遅れる
2. 家族の介護負担が長期化する
3. ケアマネジャーや介護サービス事業者の業務負担が増加する
【対策】
1. 認定調査員の増員と育成:自治体は認定調査員の採用と研修を強化し、調査の効率化を図る必要があります。
2. 主治医意見書作成の簡素化:意見書のフォーマットを見直し、医師が記入しやすい形式に改善することが求められます。
3. 認定審査会のオンライン化:オンラインでの審査会開催を推進し、開催頻度を増やすことが効果的です。
4. AIの活用:認定調査や意見書作成の一部にAIを導入し、プロセスの効率化を図ることが考えられます。
5. 迅速認定制度の導入:緊急を要する場合に2週間以内で仮の認定を行う制度を全国的に展開することが有効です。
6. 認定期間の実績公表:全市町村の認定にかかる期間の実績を公表し、改善への意識を高めることが重要です。
7. 各段階の目安期間設定:認定審査の各プロセスにおける目安期間を設定し、遅延の原因特定と改善を促進します。
これらの対策を総合的に実施することで、要介護認定審査期間の短縮を図り、高齢者が必要なサービスをタイムリーに受けられる環境を整備することが急務です。