令和6年度の報酬改定で、訪問介護事業は令和5年度の収支差率が+7.8%であったとの理由から2%~3%の減額改定となり、今年度事業所の廃止が増加している一因になっています。
 厚生労働省は、令和6年9月12日に開催した「第242回社会保障審議会介護給付費分科会」の中で訪問介護事業への支援強化パッケージを公表しました。

【訪問介護事業への支援強化パッケージ概要】
 訪問介護に従事するヘルパーの人材不足は高齢化が特に深刻な状況になっていることを踏まえ令和7年度概算要求では主に訪問介護における介護人材の確保に向けた事業に必要な経費を新たに計上。
【現状及び課題】
(1)
訪問介護等に従事するヘルパー不足は、介護人材の中でも特に顕著。
   ・有効求人倍率:14.14倍
   ・平均年齢:54.4歳 (60歳以上は全体の37.6%)
【対応方策】訪問介護等サービス提供体制確保支援事業
(令和7年度概算要求額 地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)97億円の内数)
 人材確保に向けた研修体系の整備のほか、ヘルパーへの同行支援に係るかかり増し経費や 経営改善に向けた取組などを支援。
(2)訪問介護事業者への就労希望が少ない理由として、「1人で訪問してケアを提供することに 対する不安が大きいこと」や「サービス内容ややりがいを伝える機会が少ない」ことなどがあげられている。
【対応方策】介護人材確保のための福祉施策と労働施策の連携体制の強化
(令和7年度概算要求額 地域医療介護総合確保基金(介護従事者確保分)97億円の内数)
 介護人材確保のための協議会を設置。管内各地域において、ハローワークや 介護事業所等が協力して行う職場説明会、職場見学会・体験会などを実施する取組を推進。
(3)訪問介護事業所の廃止が増加しており、その主たる要因は人員不足・高齢化等となっている。
 特に小規模な事業所は、経営改善のためのノウハウや必要な人材がいない。
【対応方策】ホームヘルパーの魅力発信のための広報事業(令和7年度概算要求額 58百万円)
ヘルパーに関する広報事業を実施し、ヘルパーの人材確保を促進。
+上記に加え
処遇改善加算の更なる取得促進+令和6年度報酬改定で新設・拡充した各種加算(口腔連携強加算・認知症専門ケア加算・特定事業所加算)の活用

詳しくは ⇒ 訪問介護事業への支援について(PDF)(厚生労働省ホームページより)

 人材の確保と既存職員の高齢化は、訪問介護事業所の最も深刻な問題の一つで、以下のような問題が生じています:
   - 加齢による体力低下で退職する職員の増加
   - シフトに入る時間や回数を減らす職員の増加
   - サービスの担い手不足による事業所の休廃止や倒産
 多くの中小規模事業者では、マネジメント人材の育成や経営力強化のための投資が難しく変化する外部環境への対応に苦慮しています。
 また、訪問介護の専門性や価値が、利用者、家族、ケアマネジャー、行政、さらには訪問介護員自身にも十分に理解されていないことが課題となっています。
これにより:
   - 不明瞭なケアプランの増加
   - 家事代行との混同
   - 訪問介護員の社会的評価の低迷
   - 求職者への魅力的な職業イメージの伝達困難
などの問題が出ています。
 これらの課題の背景には、以下のような社会問題があります:
  1. 高齢化社会の進行
  2. 社会保障費の財源不足
 これらの問題が相互に関連し、人手不足や介護難民の増加などの課題を引き起こしています。
訪問介護事業所がこれらの課題を克服し、持続可能なサービスを提供していくためには、業界全体での取り組みと社会的な支援が不可欠といえます。