最低賃金引上げ(千葉県)と厚労省の支援策──賃上げと生産性向上を同時に進める方法(2025年改定)

 2025年10月3日から、千葉県の地域別最低賃金が 時給1,140円(引上げ額:64円) に改定される予定です。
 最低賃金の改定は事業運営に影響を与えるため、効果的に国の助成制度を活用して「賃上げ」と「生産性向上」を同時に進めることが重要です。本記事では、主要な厚生労働省の支援策と具体的な活用例をご紹介します。

厚労省の主な支援策と具体的な活用例

① 業務改善助成金

概要: 事業場内最低賃金を引き上げ、かつ生産性向上に資する設備投資等を行った
中小企業等に対して助成する制度です。

活用例(実務例):

  • 介護記録のデジタル化・システム化:訪問記録や実績入力をタブレット化して事務作業を削減。従来の事務負担が削減され、労働時間短縮と賃金上昇の原資確保に寄与。
  • シフト管理・勤怠システム:時間外削減・人員配置最適化により残業削減。賃上げ分の負担を軽減。
  • 業務用車両の運行管理システム導入:移動効率向上で稼働率アップ→生産性向上を通じ賃上げを持続可能に。

助成目安: 引上げコースに応じて助成(例:30円・45円・60円・90円コース)、助成上限はコースにより30万円~600万円程度。

② キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

概要: 非正規雇用労働者の賃金規定等を増額改定(例:3%以上)し、改定規定を適用した場合に支給されます。

活用例:

  • パートタイム職員の基本給改定:パートの通常時給を3〜5%引上げし、職務に応じた等級制度を設定。1人当たりの助成額(改定率により4万~7万円程度)を人件費改定の補助に。
  • 賞与規定や手当の明文化:評価→昇給ルールを規定して運用。職務評価を導入すると助成額の加算が見込めるため、評価制度と組合せる。

③ 働き方改革推進支援助成金

概要: 労働時間削減、年次有給休暇の促進、勤務間インターバル等の取り組みに対して専門家コンサルティングや設備導入費用を助成します。

活用例:

  • 外部コンサルの導入:就業規則・シフトの最適化、残業削減計画を専門家と作成し、目標達成で助成金を受給。
  • 自動配車・ルート最適化ツール:移動時間を短縮することで労働時間短縮に繋げ、助成の対象に。
  • 勤怠管理システムと連携した年休管理:年次休暇取得率向上による加算効果を目指す。

助成目安: コースにより25万円~550万円など(規模・成果目標に依存)。

④ 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備コース)

概要: 人事評価制度、諸手当制度、職場活性化制度、作業負担軽減機器等を導入して離職率低下を実現した事業主に支給。賃上げ(5%以上)を行うと助成額が加算されます。

活用例:

  • 職務評価と等級制度の導入:明確な昇給ルートを示すことで定着率向上→助成対象。
  • 作業負担軽減機器の導入:搬送支援機器や見守りセンサー導入で作業負担を減らし、導入費の一部を助成。
  • 健康づくり制度:産業医・メンタルヘルス対策の導入で職場環境を改善し、加算条件を満たす。

助成目安: 導入内容に応じて数十万円〜数百万円(複数導入・賃上げ加算で最大数百万円台)。

⑤ 人材開発支援助成金

概要: 職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。

活用例:

  • 外部研修(OFF-JT)の実施:従業員1人当たり10時間以上の研修を実施し、終了後に賃上げを実施すると助成額が加算されるケースがあります(例:資格取得支援)。
  • OJT+評価連動の賃上げ:在籍型出向やOJTでスキルアップを図り復帰後に賃金を上げる場合の助成。
  • 新人教育プログラム導入:訓練経費の一部・賃金補助を受けながら人材育成を行う。

助成目安: 訓練内容や企業規模により異なり、訓練賃金や経費の一定割合が支給。

助成金を活用する際の実務ポイント

  • 多くの助成金は事前に「計画書」を作成し申請・交付決定を受けた後に設備投資等を実施する必要があります。事後申請では対象外となる場合があるためご注意ください。
  • 助成額は引上げ額・引上げ人数・成果目標の達成度等によって決定されます。費用対効果を見据えた計画設計が重要です。
  • 複数の助成金を組み合わせることで、初期費用を抑えつつ賃上げと生産性向上を同時に進められます(例:業務改善助成金でシステムを導入し、人材開発助成金で研修を行う等)。
  • 制度別に対象企業の範囲(中小限定・大企業も可)や申請手続きが異なります。事前に要件確認とスケジュール調整を行ってください。

まとめ

 千葉県の最低賃金は 2025年10月3日 より時給 1,140円 に引上げ予定です。賃金改定は事業コストに影響しますが、厚労省の各種助成金を活用することで、賃上げと事業の生産性向上を両立させることが可能です。まずは自社の課題(人件費負担、業務プロセス、離職率、教育体制など)を洗い出し、適切な助成制度を選定してください。

詳細は ⇒ 厚生労働省「賃上げ」支援助成金パッケージ

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※ 本記事は厚生労働省の公表資料を基に作成しています。制度内容や助成額は変更される場合があります。申請前に最新情報をご確認ください。